わたしと病気 その3

そして夜の帳が降りてくる。

 

 

このまま誰にも見つけられることなく

 

人知れず息を引き取っていく…

 

 

はずだった。

 

 

ところが。

 

 

やがてベンチに男性数名が

 

わらわらと集まり始める。

 

目を閉じたまま

 

(というか動く気力もないまま)

 

耳だけをそっとすます。

 

会話を聞くと、どうやら

 

その日は村の小さなお祭りがあった日で

 

野郎どもで呑み直そうぜ…という雰囲気。

 

集まって談笑する男たち。

 

 

少しして一人の男性が

 

「ところでさ、この下で誰か寝っ転がってるよな」

 

(あ…やっぱりバレてたか)

 

「ちょっと声かけてみるか」

 

(いや、いいです…そっとしていてください)

 

わたしの心の抵抗むなしく

 

「もしもし、もしもーし、大丈夫か?」

 

肩を軽く揺すられるも

 

目を開けるチカラも、返事をする気力もない。

 

「やばいな、救急車呼ぶか」

 

(や…やめてください)

 

熱中症かなにかかもしれないな」

 

「このスポーツドリンク、飲めるか?

 

ほれ、少しずつな」

 

そうして、久しぶりの水分をいただく。

 

 

その間119番してくれた男性が

 

ポツリと言った。

 

「よう見たら美人さんじゃないか。

 

はよ元気になって笑ってくれたらいいな」

 

「そうやな」

 

………。

 

ありがとう。おじさん達。

 

 

そして、救急車到着。

 

担架に乗せられて

 

村に唯一の病院まで運ばれる。

 

 

つづく。