わたしと病気 その4

救急車が到着したのは

 

病院というか、小さな診療所。

 

一人部屋(というか、他に入院患者はいなかった。多分。)のベッドに寝かされて

 

点滴をうける。

 

(※この辺りから正直、記憶はあいまい。

 

だけど、できるだけ書き留めてみます。)

 

そして身体に不審な傷がないか確認される。

 

(レイプの跡がないかどうかも

 

多分調べられたと思う。)

 

 

翌朝

 

福祉の人と一緒に、警察の人が来る。

 

わたしは、身分を証明するものは

 

何ひとつ持っていなかった

 

(道中で捨てた)ので

 

まず、名前から訊かれる。

 

 

もう、家には帰りたくない。

 

◯◯(本名)という人生を捨てたい。

 

そう、切望していた当時のわたしは

 

脳みそをフル回転させて

 

自分の中に、ウソの記憶と虚像を作り出した。

 

 

「名前は、あいです」

 

咄嗟に出てきた名前だ。

 

「あいさんですね。どこから来ましたか?」

 

「わからない。」

 

わたしの脳内では

 

関東近郊の山の中にある宗教施設で

 

閉鎖的な環境の中、育ち

 

訳あって最近そこから脱走してきた

 

見た目大人だけど中身子どもの設定。

 

逆コナン?的な。

 

(書いてて自分でも、なんじゃそりゃと思う)

 

 

そして、警察官とやりとりしながら

 

その設定で話し、すっかりなりきる。

 

どんどん出来上がっていく虚像あいちゃん。

 

 

警察官は、とりあえずわたしの話をもとに

 

退院したらまた、警察署の方で詳しくお話を伺いますという感じで

 

その日は帰っていった。

 

 

お昼。病院のご飯が出された。

 

島バナナという小ぶりなバナナがおやつについていた。

 

久しぶりの食事だったので、完食する。

 

歩けるようになったので

 

お風呂にも入らせてもらえた。

 

 

「坊主頭かっこいいじゃない。

 

ねえ、本当はあいちゃんじゃないんでしょ?」

 

看護師さんにそう言われるも

 

頑なにあいちゃんになりきるわたし。

 

もう、後戻りはしない気持ちだった。

 

 

その日の夕方だったか、翌日だったか

 

医者の許可が出て、退院。

 

今度は村役場の女性職員さんが

 

担当についてくれて

 

村中心部の宿に滞在することとなる。

 

宿の部屋で一息ついてから、警察署へ。

 

二日にわたる事情聴取が、はじまる。

 

 

つづく。